大空位時代 2011 11 27
書名 「金・ドル体制」の終わり
著者 副島 隆彦 祥伝社
現在、Goldの価格は、ドルで表示されていますが、
著者が指摘しているように、
いつか、ドル建て表示が終わる日が来るかもしれません。
おそらく、その時は、
原油価格についても、ドル建ての表示が終わる日となるでしょう。
そういうわけで、アメリカは、
常に、強いドルを志向しなければなりません。
にもかかわらず、最近のアメリカは、
弱いドルを目指しているように見えます。
長い目で見れば、弱いドルで得られる利益と、
Goldや原油で、ドル建て表示を失う「巨大な不利益」を比較すれば、
弱いドルを目指すことが、いかに大きな過ちであることがわかるでしょう。
もちろん、「もう超大国であることに疲れた。
アメリカは、地域大国を目指す」というならば、
現在の弱いドル志向は、理にかなった「正しい政策」でしょう。
もしかすると、多くのアメリカ人は、潜在意識下では、
「もう超大国であることに疲れた。
アメリカは、地域大国を目指す」と思っているのかもしれません。
しかし、欧州の混乱を見ればわかるように、
ドルに代わって、基軸通貨の候補となる通貨がないのも事実です。
基軸通貨とは、貿易決済通貨であると同時に、
Goldや原油の価格を表示する通貨でもあるのです。
ひょっとすると、21世紀前半は「大空位時代」が続くかもしれません。
さて、著者は、以下のように興味深い指摘をしています。
「ヨーロッパ人たちは、実に上品に会議をしている。
いったい、どこに本当の激論と対立点があるのか。
私は、気づいた。
ヨーロッパ各国の大銀行の経営者一族(おそらく財閥や富豪)と大株主から、
『銀行を破綻させて国有化して奪い取る』という一点に、
目下のヨーロッパ債務危機の核心がある」
もし、こうなると、ビューロクラートやテクノクラートのように、
高度な専門知識と政策能力を持ち、国家の政策決定に関与できる高級官僚、
つまり、EU官僚に代表されるエリート階級が漁夫の利を得ることになります。
いずれにせよ、庶民には全く関係ない話で、
庶民が得られるのものは、混乱と不景気でしょう。
もちろん、このようなことは、あくまでも著者の推定で、
事の真相は、霧の中にあります。
不幸なことに、欧州の庶民が「事の真相」を知るのは、
それが歴史の教科書に書かれてからとなるでしょう。
Gold Wars 2007 10 14
書名 「いまなぜ金復活なのか」 徳間書店
著者 フェルディナント・リップス 大橋 貞信(訳)
この本から、興味深い文章を取り上げましょう。
「古代ギリシアの都市国家群とは対照的に、
ローマ帝国は貨幣の重量を偽るという誘惑に打ち勝つことができなかった。
小さくしたり、数を増やしたり、質を落としたりと、
貨幣をいじくりまわし、最終的には使い物にならなくしてしまったのである。
政府が絶えず浪費を続ける中では、
経済は繁栄できないことを証明した古代ローマ人は、
ある意味で、最初のケインジアンであった。
通貨への信認が失われ、また通貨の質が実際に低下するのに伴って、
商品を生産することよりも、投機の方が魅力的になってしまった。
金は東方に流失し、ローマ帝国の衰退は決定的なものとなった」
はたして、現代のローマ帝国であるアメリカの行く末は、いかに。
さて、この本の序文には、こうあります。
「初めて日本を訪問して、私は日本の文化、伝統に魅了されるあまり、
帰国後には、別荘に日本式の風呂を設えさせました。
そんなことをしたくなるのも道理で、日本は私が知る限り、
最も美しい国の一つなのです」